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動物実験から実用化される治療法はわずか5%、122の論文から分かった“不都合な真実”

動物実験の成果、ヒトへの応用は20件に1件


 動物実験はしばしば、ヒトの病気に対する治療法を開発するための最初のステップと考えられている。しかし122本の論文を対象にしたレビューから、動物実験の結果が実用化された治療法はわずか5%に過ぎないことが明らかになった。


 チューリッヒ大学(スイス)の神経学者であるBenjamin Ineichen氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS Biology」に6月13日掲載された。Ineichen氏らは、「動物実験の結果と初期の臨床試験の結果の一貫性は高いものの、規制当局の承認を得た治療法はわずかだった」と述べている。


 治療法の開発に関する研究では、動物実験とヒトを対象にした初期試験を経た上で、ランダム化比較試験(RCT)によりその治療法の有効性と安全性を確かめるのが通常のステップだ。RCTで望み通りの結果が得られた際には、その結果を規制当局に提出して承認を求める。


 Ineichen氏らは、Medlineなどの論文データベースから選び出した122件のシステマティックレビューを対象にアンブレラレビューを実施し、動物実験の結果が実際にヒトに応用された治療法の割合とそれにかかった時間、また動物実験での結果がヒトを対象にした臨床試験でも再現された治療法の割合を調べた。対象とした研究には、54種類の疾患に関する367種類の治療法が含まれていた。


 その結果、動物実験のうち、臨床試験へと進んだのは50%、RCTへと進んだのは40%、規制当局により承認されたのはわずか5%であることが明らかになった。


 それにもかかわらず、動物実験で得られた良好な結果の86%は臨床試験でも再現されていた。治療法が、臨床試験、RCT、承認に至るまでにかかった期間(平均)は同順で、5年、7年、10年であった。


 研究グループは、「臨床神経学の分野でいうと、メラトニンや間葉系幹細胞を用いた治療法のように、動物実験や初期臨床試験で有望視され、脳卒中に対する有効な候補として報告されている治療法の多くは、まだ標準的な治療法にはなっていない」と説明する。



動物実験のデザインが不十分で一貫性がない


 また、「アルツハイマー病や脊髄損傷のような他の神経疾患でも同様のパターンが認められ、いくつかの治療法は前臨床試験で有望な結果が得られたものの、実用化には至っていない」と付け加えている。


 研究グループは、このような結果の背景には、臨床試験と規制当局の承認要件が厳しすぎるために、「潜在的に価値のある多くの治療法が置き去りにされている可能性がある」と推測している。


 さらに、「より重要なのは、動物実験やヒトを対象とした臨床試験のデザインが不十分で一貫性がないため、信頼性の低い知見しか得られていない可能性がある点だ。それが原因で、これらの潜在的治療法は臨床試験に進めないのだ」との見方を示す。


 その上で、「動物実験からヒトを対象にした試験への移行率を改善するために、動物およびヒトにおける研究デザインの頑健性を高めるべきだ」と主張している。(HealthDay News 2024年6月14日)




Diamond Onlineより

 
 
 

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